僕は、20年以上、デザイン系の採用活動には多く関わってきました。たぶん、ポートフォリオは2000冊以上は見させてもらいましたし、面接も500人以上はしていると思います。僕が採用にかかわったのは、プロダクトデザイナー、インタフェースデザイナー、Webデザイナー、グラフィックデザイナーなど多様な分野の人たちです。
企業から大学に移ってきて、デザイン系の学生たちに、就職のアドバイスをさせてもらっていますが、日ごろ、話していることをまとめてみました。ポートフォリオについてはこちらにまとめてあります。がんばってください。
これは当たり前のことですが、企業ではビジネスの目標があり、その目標を達成するのに適した人を採用します。必ずしも優秀な人が欲しいのではなく、その時に欠けている人が欲しいのです。
例えば、優秀すぎるので辞めてしまうかもしれないのでやめておこう、職場のバランスを考慮すると面接した学生と似たような人がいるので今年は違うタイプを 採用しよう、今年の採用は少しのんびりしている人がよい、まずは力仕事のような仕事が主 なのでスマートすぎる人は無理かも、などの考えで採用を決定する場合もある。まずは、自分が働きたい企業にチャンレジすることも大事だが、そのよう な事情もあるので、落ちてもがっかりしないこと。
2「いくつかの企業に内定をもらえる人と、どの企業にも内定をもらえない人の差は何か?」
なかなか本人がその差を気がつかない場合が多い。客観的にアドバイス してくれる人に正直に聞いてみることをお薦めします。やはり自分の長所と短所を、客観的に把握して、それを考慮して対処することが重要。正直に人から聞く素直な態度と、正直にアドバイスしてくれる人がいるかどうかが、ある意味でその人のスキルということになると思います。
例えば、基本的なビジネスマナーが出来ていない人、就活の本に書いてあるようなことを暗記してきて話す人、その会社のことを真剣に調べてきていない人、前向きな印象を受けない人、など、難しい場合があると思います。
3「デザインの採用であっても、作品以上に「企業でみんなと一緒に働ける人物」が重要である場合が多い。」
作品やポートフォリオは重要だが、それはあくまでも採用の一つの要素にすぎない。採用では、総合的に人材として判断する。
例えば、あまり自分の作品をしつこく強調すぎる人は、企業で一緒にやれる人と思われない場合もある。
4「デザイン部門の担当者は「一緒に働いて、楽しい人」を採用したい。」
例えば、あるレベルであれば、そんなにスキルの差がない。スキルよりも、その人が同僚として会社に来てくれたら、モチベーションがあがる人を採用したい。 その人が会社に来たら、部門の士気が下がるかもしれない人は、いくらスキルが優秀でも採用されない場合も多い。
5「人事の担当者は「デザイン部門の採用であっても、将来は別の部署に行くことも考慮して、別の部署に行ってもやれる人」を採用したい。」
人事という視点で考 えれば、目先のデザインスキルよりも、将来、リーダーや事業部長となれるような人材を採用したい。実際に多くの企業では、デザイン部門に配属されても、他の部門に異動になる場合も多くある。
6「学生が、どの企業がよいか、見分けることは難しい」。
一番よいのは、OBや知人をたどって、その企業で働いている人の声を聞くこと。また、今よくても後で、企業の状況が悪くなることもある。長期的な視野でアドバイスしてくれる人の話しを聞くことが大事。また、先のことはあまり分からないので、就職する企業は永久就職と考えず、一つのステップであると考えることも必要。
例えば、実態はあまりよくない会社は、給与、待遇などをよく見せたがる場合もある。また、10年前によくて、今は大変な状況にある企業も多い。僕のお薦めは、今が旬の会社ではなく、これからのびる可能性のある会社の方がおもしろい。例えば、デザイン部門がある企業より、これからデザイン部門を作る可能性のある企業。
7「新卒採用で、自分のやりたい仕事につけないことは多いが、社内での部門異動や転職によって自分のやりたい仕事を見つけることができる可能性が高い。」
まずは、就職して社会での経験を積んで、社内異動や転職にそなえる方がよい場合がある。就職をせずに卒業して社会にでると、「新卒」でも「中途採用(経験者をさ す)」でも、なくなってしまうので、正社員の仕事を探すのが難しくなる。
例えば、営業の仕事しながら、営業の仕事の中でデザインを生かしたり、勤務時間外 に自分の作品を作ったり、コンペにだしたりして、知り合いの仕事を手伝だったりして、デザイン関連の仕事を目指す方法もある。
例えば、佐藤雅彦さんは電通の営業にいて、31才に試験受かってクリエイティブ局に異動することができた。
8「採用活動だけきちんとしたことやっていても難しい。日頃の活動や行動が採用活動にあらわれる。」
採用担当者は、ちょっとした文章表現や面接での対応よ り、日ごろはどのような行動をしているか読み取ることができる。
例えば、普段は時間にルーズな学生が、面接の時に早くいっても、ちょっとした言動から、時 間にルーズであることは見破られてしまう。まずは、日常の行動の中で、社会での常識的な行動を実践することが大事。
例えば、遅れそうな場合は連絡する、部屋へ入る前にコートを脱ぐ、ポートフォリオや作品を相手に見やすいような位置に置く、何か言われたらメモをとるな ど。社会での常識的な行動がとれない人や、とれそうにない人は、企業ではもっとも避けたい人材となります。
9「自分で考えて、自分から提案していく人材を求める企業は多い。」
企業はどんどん変化していく。その変化を感じて、みずから提案して、行動していく人材を求める企業は多い。これを面接の時だけ対応するのは難しく、日頃の活動や行動が採用活動にあらわれる。採用担 当者は、ちょっとした文章表現や面接での対応よ り、日ごろはどのような行動をしているか読み取ることができる。
例えば、学生時代に、イベントのリーダーシップをとったり、プロジェクトを提案したり、積極的な活動をしている人は、面接時に、にじみでてくるものである。
10「就職活動は一生続いていくもの。よい時もわるい時もある、デザインに関するこころざしを大切にして長い目でみた活動をしよう。」
自分のやりたいことをやるためには時間がかかる場合が多い、「デザインに関するこころざし」を大切に、長期的な視点で活動をしていこう。海外では、本当にすぐれたデザインができるのは50才を越してからと言われる場合もある。社会への入り口が、必ずしも自分の望んだことと違う場合もあるかもしれないが、「デザインに関するこころざし」が、ぶれなければ、きっと道は開けると思う。
就職活動はたぶん、仕事をやめるまで続くものなので、デザインを目指す学生は、ぜひ「めげずに」、「しつこく」、「したたかに」、就職活動を続けて欲しい。
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